トップページに戻る
  少年リスト   映画リスト(邦題順)   映画リスト(国別・原題)  映画リスト(年代順)

And Then I Go それじゃあ、僕もやる

アメリカ映画 (2017)

アメリカでは銃規制が甘いことから、学校での乱射事件が後を絶たない。今年(2018年)に限って見ても、1月23日にケンタッキー州のマーシャル郡高校(2人死亡、犯人は15歳)、2月14日にフロリダ州のストーンマン・ダグラス高校(17人死亡、犯人は19歳)、5月18日にテキサス州のサンタフェ高校(10人死亡、犯人は17歳)と3件が起きている。犯人が15歳以下のものを探すと、1990台の後半からでは、1997.12.1、ケンタッキー州ヒース高校(3人死亡、犯人は14歳)、1998.3.24、アーカンソー州ウェストサイド中学校(3人死亡、犯人は11歳と13歳)、1998.5.20、オレゴン州サーストン高校(4人死亡、犯人は15歳)、2001.3.5、カリフォルニア州サンタナ高校(2人死亡、犯人は15歳)、2014.10.24、ワシントン州メアリーズビル高校(4人死亡、犯人は15歳)がある。この映画は、こうしたローティーンが自分の学校の生徒を撃ち殺すという異常な行動に至るまでの経緯を、映画史上初めて克明に描いた作品である。しかも、主人公が、狂気に満ちて、「感情移入」の困難な主犯ではなく、主犯によって犯罪に巻き込まれていく弱気な従犯になっているところが、実に巧みと言える。これなら「感情移入」しやすいし、「不本意」ながら凶行に及ぶまでの心理的な描写にも、よりリアリティが感じられるからである。主人公の8年生(13歳)、エドウィンを演じるのはアルマン・ダーボ(Arman Darbo)。見事な演技で映画に信憑性と緊迫感を与えている。映画の中で使われる英語はかなり汚い。“F word” が連発される。英語自体もきわめて分かりにくい。一例を示すと、「Don't wuss out on me」という台詞。“wuss” は「弱虫、腰抜け」という意味の名詞。“wuss out” については日本語の情報がなく、「To withdraw from a commitment or course of action because of cowardice or insecurity(臆病もしくは不安から約束や行動方針を引っこめる)」と書かれてあった。“wuss out to” になるとさらに曖昧で、WordReference.comというサイトへの投稿で、「I assume that "wussed out on = refused(拒絶する)" ?」とあった。2番目と3番目は近いので、結局、「今になって逃げるなよ」と訳した。この映画の英語は、教科書英語とはかけ離れていてとても分かりにくい。非常によくできたイタリア語字幕を併用できなければ、紹介は不可能だった。

5歳の頃からこの町で育ち 8年生になったエドウィンは、小さかった頃の快活さが徐々に失われ、寡黙で誰からも相手にされない少年になっていた。唯一の友達は近くに住んでいるフレーク。こちらはもっとダメ少年で、頭は悪く、品性は最悪、自分のことしか考えず、あらゆることに不満を抱いている。しかし、それを打ち破るだけの気力も能力もない。なぜこの2人が結びついたのかは分からない。しかし、結びついたお陰で、2人は完全に孤立してしまう。フレークは、相手に仕返しができる場合には、過剰に反応し、相手が強すぎて何もできない時には、怒りを溜め込む。たいていの場合、その場にエドウィンも一緒にいるので、巻き添えを食うことが多い。だがら、短大で教鞭をとっている父には、息子の交友関係が不満でたまらない。しかし、そんな父親にも罪はある。もし、エドウィンが小学生の時 連れていってやっていたように、夏のヨット遊びを続けていたら、エドウィンはもっと外交的な少年になっていたかもしれない。しかし、自立心ができてしまった今では、軌道修正は困難で、父が何を言っても耳を貸さなくなっている。エドウィンには、色彩を巧みに使って絵を描く才能があることが分かり、改善に向かう可能性もあったのだが、両親はそれには無関心。逆に、フレークの方は不満が累積し、学校に復讐しようと思い始める。そして、それに使うことにしたのが、父親が集めている銃〔アメリカでよくあるパターン〕。フレークは、誇らしげにエドウィンに銃を見せ、襲撃案を一緒に考える。エドウィンも、まさか本気だとは考えず、お遊びのつもりで付き合う。このフレークの「仮想襲撃構想」は、①フレークが上級生から最大級の侮辱を受け、②3人目の仲間になりかけたハーミーを虐めから救えず赤っ恥をかいたことから、「即刻実行」へと変化する。ターゲットとなったのは、金曜に行われる体育館内での全校集会。フレークは、2つのドア以外の出入口を外から封印して逃げられないようにし、エドウィンと一緒に銃を構えて体育館に突入する。

アルマン・ダーボについては、よく分からないことが多い。一番多い情報は、中国映画『Kung Fu Man(カンフーマン)』に関する各種レビューから得られた。それによれば、アルマン・ダーボはパリ生まれ、北京の国際フランス学園に通っている時、映画に出演した(準主役)。アルマンは、その後、中国映画『Deep Sleep No More』(2013)にも少しだけ出演。この年までは中国に住んでいた。次の出演作はフランス、コスタリカ合作の『Defenders of Life』(2015)。ここでも準主役。この時点ではフランスに戻っていた? 以上3つの映画では、すべてたどたどしい英語を話している。しかし、その次に出演したのがこの映画。そこでは、アメリカ人かと思うほど流暢な英語を話している。そして、次回作の『Itsy Bitsy』『Greatland』(公開直前)はいずれもアメリカ映画。ということは、フランスからアメリカに本拠置を変えたのだろうか? また、年齢だが、2009年の時点で8歳という情報があったので、この映画が2016年の撮影なら15歳ということになる。参考までに、中国時代のプロマイド写真と、『Defenders of Life』の予告編の映像を下に示しておこう。


あらすじ

映画は、エドウィンの独白から始まる。映像と言葉が対になっている。「これは、僕が育った家」「ずっと使ってないヨット」「あれがフレークの家。一番のダチだ」。ここから学校。「ここが学校。僕には絶対開けられないロッカー」「この場所〔学校〕のことを考えると、怖くて夜 眠れない。もし、眠れても悪夢しか見ない」「みんな どこかのグループに入るか、入りたがってる。ここじゃ、でっかいクソの山が、プカプカと漂って流れてる。そして、澱んだクソどもの一番下に、僕とフレークがいる。僕らのグループは2人だけ」。彼の境遇がストレートに伝わってくる。エドウィンは、ロッカーの前に行く。この学校のロッカーは、ダイヤル式金庫と同じ。右4、左17、右23と回さないと開かない。それが、エドウィンにはどうしてもできない(1枚目の写真)。だから、中に入っている物が出せない。授業が始まり若い女性の教師が、「エドウィン、教科書は?」と訊く。「ロッカーの中」。「必要なものを なぜ出さないの?」。「ホント、何でだろう〔Sometimes I wonder〕」。「先生は訊いてるのよ。ロッカーがどうしたの?」。他の生徒が、「彼、ロッカーを開けれない」と言い、みんなが笑う。教師は、「それ、本当なの?」と訊く。エドウィンは、「うざいな〔Oh, fuck me〕」と “F word” を使ってしまう(2枚目の写真)。教師の前での “F word” は厳禁なので、即、教頭室に行かされる。教頭は、「マイヤー先生は、君が文明人らしく振舞えるようになるまで、教室に戻ってくるなと言われている」と切り出す。「いつ、そうなれるのかね?」。エドウィンは肩をすくめる。「何があったのか話したまえ」。「ロッカーが開かなかった」。「ロッカーが開かない?」。「また、くり返しかよ」。「ロッカーが開かないと、授業中に汚い言葉を使ってもいいのかね?」。「その通り〔You suppose right〕」(3枚目の写真)。「そうか、ご両親に私から連絡すると、言いなさい」。返事がない。「聞いてるのか?」。「サプライズにしとくよ」。「何て子だ。私が子供だった頃は、君みたいな子は尻を叩かれたぞ」。
  

エドウィンとフレークが学校の廊下を歩いている。しゃべるのはもっぱらフレークで、教育ママに対する不満をぶちまける。そのうちに、歩いている場所は、サッカーのグラウンドになる。突然、サッカーボールが飛んできてフレークの頭を直撃する(1枚目の写真、矢印)。蹴った選手は、謝りもせず、ただ、「ボール」と言っただけ。ボールを投げてくれという意味だ。怒ったフレークは、ボールを拾うと、そのまま手に持ち、別の方向に蹴ろうとする。それに気付いた選手は、「ざけんな〔What the fuck〕!」と叫んで走り寄ると、フレークが蹴った瞬間に「何しやがる、この野郎〔What's up now, bitch〕?」と言いながら飛びかかる。エドウィンは助けようと、この選手に飛びつくが、それを見た別の選手が、今度はエドウィンを攻撃する(2枚目の写真、矢印はエドウィン)。フレークは口だけは生意気だが、体力は全くないので、選手に投げ飛ばされ、揉み合いになる。フレークが、「Fuck you」(くそったれ)と叫ぶと、相手は、その言葉を文字通り受けて、「Fuck me?」(死にたい、私を殺してというニュアンスにもなる)と言い、「そうしてやる」と自分の靴を脱いでフレークをメチャメチャに叩く。それにようやく気付いたコーチが、「やめろ〔Knock it off〕!」と駆け寄るが、選手はなかなか止めない。実に暴力的な人間だ。フレークは痛さと悔しさに涙が止まらない(3枚目の写真、矢印は鼻の先端の涙)。フレークの「学校に対する憎しみの芽」は、この時点で生まれたのかもしれない。そういえば、昨日(2018.11.28)のTVのニュースで、イギリスのHuddersfieldという町で、15歳のシリア難民の少年が16歳の少年にグラウンドで芝生の上に倒され、顔にポットボトルの水をかけられた映像(2018.10.25撮影)が流された。それと同時に加害した少年は少年法廷〔Youth Court〕に召還される予定で、同情の義援金3万ポンド〔436万円〕が家族に贈られとも伝えられた。映画でのフレークは(エドウィンも)、ケガまでしているのに、コーチは「大丈夫か?」と声をかけただけで、ケガの心配もしないし、加害者の選手を叱りもしない。この差は、いったい何なのだろう? 相手が難民だからか? スマホで撮ってネットに流さなかったからか? 国情の違いか? この事件が「憎しみ」の原点となるだけに、考えさせられるニュースだった。
  

その日の夕食。父は、エドウィンの顔の傷を見て、「ロディ〔フレークのこと〕の巻き添えか?」と訊く。「今度は 違う」。「じゃあ、これを最後にしておけ」。「何でも彼のせいにされちゃう」。「誤解されるタイプって訳か?」(1枚目の写真)。そして、「別の友達はどうだ? 考えたことないのか?」と訊く〔父は、フレークを悪友だと思っている〕。「5歳の時から、誰にも会わなかった訳じゃないだろ?」(2枚目の写真)〔5歳の時に、この家に引っ越した?〕。そして、さらに、「1週間の外出禁止だ。学校で居残りさせられたなら、家でも罰則だ」と付け加えるが、エドウィンは そんな小言は聞いていない。大好きな弟ガスを顔であやしている(3枚目の写真)。「おい、聞いてるのか?」。「アイスクリームは、もういいよ」〔ぜんぜん聞いてない〕。「2週間〔外出禁止〕にして欲しいのか?」。エドウィンは、弟が食べ物を口から落としてナフキンが必要になった時、「ガスなら、まともになれるさ」と言い出す。母:「そんなこと言わないの。あなたは異常じゃないわ」。父:「性急な判断は良くないぞ」。母:「あなた!」。父→母:「冗談も言えないのか?」。父→エドウィン:「お前は大丈夫。母さんが正しい。お前は異常じゃない」。エドウィン:「『じゃない』?」。母:「『じゃない』わ」。エドウィンの家庭はごく普通。暴力的な父も、育児に無関心な母もいない。エドウィンは少しズレているが、弟思いの兄という意味で、十分に家族の体をなしている。
  

食事が終わり、父と弟はTVを観ているが、エドウィンはキッチン・テーブルに片肘をついてボーっとしている。母が、「TVを観ない子、他にもいるの?」と尋ねると、「僕の他に?」と訊き直す。「あなたと、ロディ以外によ」。「分かる訳ないだろ〔Not that I can think of〕」。「ソーシャル・メディアは?」。「ソーシャル・メディア?」。「ほら、フェイスブックとかインスタグラムとか。あなたたち やってないでしょ。他の子たちは?」。「もち、やってるさ」(1枚目の写真)。「仲間外れにされた気しない?」。「しょっちゅう」。母も、手の打ちようがない。夜、エドウィンの寝室。時計が映ると、2時14分。目が覚めたのか、眠れなくて起きているのかは分からない。エドウィンは、ベッドサイドの固定電話から受話器を外すと〔スマホも携帯も持っていない!〕、番号をプッシュする。すぐに相手が出る。エドウィンは、変な声で、「ターゲット・ワールドにようこそ」と言う(2枚目の写真)〔Target Worldは、有名な銃器専門店だが、この時点でエドウィンは銃器と全く関連がないので、ただの言葉遊びの可能性が高い〕。「誰だ?」。また、変な声で「皇帝サマタール」〔こちらも該当なし〕。「何だ、また お前か。こんな時間に何の用だ?」。エドウィンは怪獣の声を続ける。フレークは変人だが、それでも呆れて電話を切る。エドウィンは画帳を出してくると、鉛筆で絵を描き始める。片方のページには、墓、棺、包丁が描かれ、描き始めたのは燃えている家(?)。時間といい、内容といい、あまり正常とは言い難い。
 

エドウィンとフレークが、エドウィンのガレージの前でバレーボールを屋根に投げては、どちらが拾うかで遊んでいる。体がガレージの扉にぶつかるので騒音がうるさい。隣の家で庭の手入れをしている老女が、迷惑そうにチラチラ見ている(1枚目の写真、矢印は老女)。フレークが、「俺が勝った」と言うと、老女は すかさず、「終わっちゃって残念ね」と嫌味を言う。フレークも、それを感じて、「どうもありがとう、ペングウェイさん」とワザと何度もくり返す。そして、夕食の時間。母が、「今、誰から電話があったと思う?」と言いながらパスタを持って来る。父:「じゃあ、法王」。「違う」。「誰?」。「ペングウェイさん。すごく怒ってらした。テーブルの上にとっても面白いものが乗ってたんですって」(2枚目の写真)。そして、エドウィンに向かって、「何だか知らないの?」と訊く。「ううん」。父は、「母さん、何言ってるんだ?」とエドウィンに訊く。「さあ」。母:「ペングウェイさんのピクニック・テーブルの上に何があったか、なぜ言わないの?」。「他人のピクニック・テーブルの上のものなんか、分かるハズないだろ」。「知らないの?」。「ああ」。そして、「首チョンパ? 死んだイタチ? 何なのさ?」と訊き返す。父:「何だった?」。母:「人のうんこの山」。エドウィン:「僕がやったって?」。「あなたかロディ」。「やるハズないだろ!」。母:「怒らないでちょうだい。訊いてるだけよ」。父:「お前が置いたのか?」。「まさか」。「ロディ、フレーク、どっちでも構わんが、奴がやったのか?」。「違う」。「じゃあ、誰だ?」。「知るかよ」。「お前たちのどっちかがやったんだ」。「なんて言えば気が済むんだ?」。母:「ウソはダメよ」。「ウソなんか言ってない!」。「おっしゃい」。「何もやってない! どうすりゃいいんだ?!」(3枚目の写真)。一方的に疑われ、何を言っても信じてもらえないので、エドウィンは頭に来て席を立って部屋を出ていく。母は、「あの子どうしちゃったの?」と言うが、これは明らかに両親の方が悪い。それと同時に、フレークが如何に陰湿な人間かがよく分かる。
  

翌日。エドウィンはむしゃくしゃして、住宅地の道路際に座っている(1枚目の写真)。仲の良さそうなアベックが脇を歩いていくと、バッグから炭酸水のペットボトルを取り出し、思い切り振った後、空高く投げる。ペットボトルはアスファルトに激突し、中身が飛び散る(2枚目の写真、矢印)。エドウィンの気持ちをよく現しているシーン。その後、場面は学校に変わる。2人が、暗い感じで通路の隅に立っていると、2人の男子生徒が通りかかる。彼ら同士の会話。「お前、女の子にキスしたことあるか?」。「ああ、お前、クリトリスって何か知ってるか?」。その言葉に、エドウィンが口を出す。「フレークなら、知ってる」。「そう思うのか?」。そこで、もう1人が、フレークに、「女性に穴がいくつあるか知ってるか?」と訊く。「ああ」。「そうか。じゃあ、いくつだ?」(3枚目の写真)。フレーク:「下らん」。A:「知らないんだ」。フレーク:「3つ」。「どこにある?」。「1つは前、1つは後ろ」。「それから?」。フレークは答えられない。A:「やっぱ、こいつ知らないんだ」。B:「ママの穴しか知らないのさ」。A:「こんなアホウ、信じられるか?」。フレークは怒って2人に殴りかかる。その結果は示されない。
  

恐らく、そのしばらく後。エドウィンは、フレークの部屋にいる。フレーク:「…そこで、思いついたんだ。ペングウェイのテーブルの上でクソをした後、ガレージで幾つか頂戴しようってな」(1枚目の写真)。「テーブルなんて、よく思いついたな」。「お前、トラブったか?」。「もちろん。当たり前だろ」。「そこで、虫殺しの粉を見つけた。殺虫なんとかってやつだ。すげえ毒じゃないかな」。「じゃあ、虫でも獲ってこようか?」(2枚目の写真)。「そんなことしなくていい。俺は、20ポンド〔9キロ〕の中ら1ポンド盗ってきた」〔1ポンド入りのビンが20個置いてあった〕。ここで、1階から怒鳴り声が聞こえる。「ロディ、ここに降りて来い!」。フレークがいなくなった後、エドウィンが何となく壁の黒板を見ると、そこには 学校が空爆され、生徒が死んでいる絵が描かれている(3枚目の写真)。戻ってきたフレークに、エドウィンは、「じゃあ、どうする気だ?」と訊く。次の映像は、校舎の前を走る2人。フレークが、走りながら「虫殺しの粉で、人間も病気なると思うか? 試してみようぜ」と言う。校舎の中に入った2人。エドウィンは、「通気孔にどうやって粉入れるんだ?」と訊く。「信じろ。できるって」。しかし、ダクトの入口は厳重に金網で保護されている。フレークは、「これじゃビンが入らねぇ」とブツブツ。エドウィンは、袋に小分けしたらと提案するが、フレークは それを無視し、近くの機械に小便をかけて終わり。フレークが、如何に狭量で、他人の意見を聞かないかが分かる。
  

別な日。2人は、フレークの部屋で非生産的にゴロゴロしている。すると、フレークが、「おやじの銃、見たいか?」と言い出す(1枚目の写真)。「どんなやつ?」。「銃さ。1つじゃない」。そして、地下の両親の寝室に連れていく〔地上1階、地下1階の家/両親は不在〕。フレークは、ベッドの下から火器の入った大きなバッグを取り出し、ベッドの上に置く。中を開け、「こいつはカービン銃。WW2〔第2次大戦〕の時のだ」「こっちはカラシニコフ。ロシア製」。そして、エドウィンに持たせる。「9ミリって奴だ」(2枚目の写真)〔AK-9のことか?〕。3つ目は小さな拳銃。「親爺の新しい趣味だ。先週ガン・ショップで買った」。「銃弾は?」。「別なトコに隠してる。俺が何考えてるか、分かるか?」。「何考えてるの?」。「お前が思ってることさ」。「学校の奴らを、同じようにしたいの? コロラドみたいに」(3枚目の写真)〔1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件のこと。2人の生徒が12名の生徒と1名の教師を射殺し、自殺した〕。「違う。奴らはしくじった〔they were fuck ups〕。あんな風になりたくない」。「2人の名前、誰だったっけ?」。「お前、TVキャスターか? やる気 あるのか ないのか、どっちだ?」。「どれを使うか選べる?」。「ああ。3つあるからな。俺たち、計画をねらんといかん。奴ら〔コロンバインの2人〕のよりいいヤツをな」。「モチ、そうだな」。「いいか、俺は本気だ。拳銃ごっこじゃない」。「分かってる」。「お前は、どうなんだ? お遊びか?」。「違う」。「本気じゃないだろ?」。「様子を見ようよ〔Wait and see〕」。エドウィンは、何とか待ったをかけた。
  

夕食の場で。母は、エドウィンに、「あなたたち、光合成に取り組んでるんですって? ロディのお母さんから聞いたわ」と話しかける。エドウィンには答えようがない〔恐らく、フレークがペングウェイ夫人のガレージから盗んだ容器は殺虫剤ではなく、土壌改善のために光合成細菌剤だったのだろう。だから、難しい文字(光合成=photosynthesis)がフレークには読めなかったし、その容器を見た彼の母が、目的を誤解してエドウィンの母に伝えた〕。「私も関心があるわ。光合成について、何が分かったの?」。「クソ変なこと〔Some strange shit〕」。“shit” も “F word” なので、父は「こら」と言い、母は「弟の前で悪態つかないで〔don't swear〕」と注意する。弟が、「つけるよ〔can swear〕」と、“swear”(教科書で習うのは「誓う」)の意味を取り違えて兄を擁護する。父:「お前が自分の子供を持てるようになるまでダメだ」。その後で、父は、「今日、教頭先生から素敵な電話がかかってきたぞ」と告げる(1枚目の写真)。「ナンだって?」。「会いたいそうだ」。母:「私たち全員で?」。この頃から、弟が「ナーフボール〔Nerf ball〕欲しい」〔幼児用のスポンジ・ボール〕と駄々をこねだす〔伏線〕。エドウィンは、教頭からの電話と、弟と両親のやりとりがうるさく、頭を抱える(2枚目の写真)。そして、夜。時計は1時51分を表示している。エドウィンは寝付かれず、起き上がると、隣の弟の部屋を覗く。すやすやと寝ている弟の顔を見て、エドウィンの心も落ち着く(3枚目の写真、矢印は弟の頭)。彼は 本来優しい心の持ち主だということが、よく分かる。
  

別の日。学校で。絵の時間。エドウィンは大好きな弟の絵を描いている。すごくカラフルだ。順番に出来具合をチェックしていた絵の教師は、「何を描いてるの」と言いながらエドウィンの作業机までくる(1枚目の写真、彼だけは大きな作業机に1人で座っている→孤立している)。そして、「ねえ、すごいじゃないの、エドウィン」と褒める。「弟だよ」。「これが弟さんなの。すごく上手よ。色使いが抜群ね、そのまま頑張って」。エドウィンが学校でこれまで一度もかけられたことのない褒め言葉だ。反応は素早かった。いつものように、エドウィンがフレークと2人だけでランチを食べていると、2人の女の子が前にやって来て、女の子Aが「ねえ、エドウィン、今度の美術のクラスの『色彩の世界』、3人で組むことになったの」と話しかける。無関係のフレークが、「で?」と口をはさむ。女の子A:「アーノルド先生、すごく褒めたわ」。女の子B:「絵の才能、バッチシね」(2枚目の写真)。それを聞いたフレークが、動物のマネをして変な声を出す。女の子Aは、「それ何よ?」と気持ち悪がる。女の子B:「考えてみてくれる?」。エドウィンは、嬉しそうに、「いいよ」と申し出を受ける(3枚目の写真)。女の子B:「3人組の1人だってこと忘れないで」〔フレークには近寄って欲しくない〕。フレークさえいなかったら、エドウィンはまともになれたかもしれないと思わせるシーンだ。
  

2人は、橋の下で襲撃計画を練っている。フレークが「学校には出入り口が8つある」と言うと、エドウィンは「もっとあると思ってた」と反論し、フレークに睨まれる。「ごめんよ。だけど… 君だって間違えることあるだろ」。「くそ、俺一人でやりてぇな」。「じゃあ、そうしろよ。まあ、いいや、じゃあ、全部のドアをふさぐのか?」。「それが問題なんだ。次から次に、そんなことできるハズない」。「じゃあ、どうしてこっちの2つのドアにしない? 全校集会の時、体育館でやればいい」。「そいつはいいな」(1枚目の写真)。そして、体育館の入口の2つのドアの絵の上に指を置き(2枚目の写真)、「実にいい」と感心する。このシーンを見る限り、フレークは頭が悪く、おまけに人の意見には耳を貸さない「最低のクソ」だ。しかし、目的達成のためには頭のいいエドウィンを手放せない。2人は、その後、フレークの家に行き、ドアを封印できる材料を物色する(3枚目の写真)。
  

エドウィンと両親が教頭室に並んで座っている。教頭が、前回の失言に至る状況について両親に説明し、「そんなところかな〔Does that sound about right〕?」とエドウィンに訊くと、「『そんなところ』だよ」と答える(1枚目の写真)。同席している女性教師は、「そこが心配なんです。エドウィン君は、いつもプレッシャーを受けている感じで、何も言わないかと思うと、反社会的な行動に走るのです」と両親に説明する。「彼は聡明で、優れた才能を持っています〔has a very good head on his shoulders〕。アーノルド先生は、美術のクラスで、エドウィン君がとても熱心に課題に取り組んでいると褒めておられます。私も見ましたが、とても…」。母は、エドウィンがプラス評価されたことに驚き、「何の課題なの?」とエドウィンに尋ねる。「何かのコンペだよ」と、どうでもいいといった感じで答える(2枚目の写真)。教頭は、話を本題に切り替え、今期になり、エドウィンの挙動が明らかに変わったので、夏休みの間に何かトラウマになるようなことが起きなかったか、と尋ねる。両親には分からない。エドウィンに直接尋ねても、「1年上がった」と言うだけ。そこで、教頭は、エドウィンを、社会化のためのプログラムに参加させるように勧める。両親は賛成し、エドウィンも仕方なく同意する〔結局、一度も参加しない〕
 

2人がいつもの橋の下に行くと、そこには4人の上級生がいて、1人がフレークの画帳を手にしている。フレークは、駆け寄ると、石を拾い、「そいつは、俺たちのだ」と渡すよう要求する。上級生:「それで、俺たちを殴るつもりか? そんな石で脅せると思うのか?」。「スケッチブックを寄こせ」。「石を置け」。「寄こしやがれ!」。「置くんだ!」(1枚目の写真、矢印は画帳)。相手の方が上なので、フレークは石を投げ捨てる。すると、上級生は「最低の絵だ」と言って画帳を地面に叩き付ける。「どっか他の場所で、舐め合って〔blow each other〕くるんだな」。他の上級生A:「このゲイの絵、見てみろよ」。B:「ナンだよ、全部ヤバい絵ばっかじゃないか」。その言葉を聞いたフレークは、悔しさ一杯の顔で去って行く。以前の回で、画帳には体育館襲撃の図が描いてあったハズなので、この上級生の言葉は意味不明。どう見ても、フレークとエドウィンがゲイ友とは思えない。2人が向かった先は、フレークの両親の寝室。床の上には、銃器と銃弾が散乱している(2枚目の写真)。エドウィンが、「まだ、怒ってる?」と訊く。「『まだ、怒ってる?』」。「これ、ホントにできると思ってる?」(3枚目の写真)。「さあな。後で話そうぜ」。
  

ある日、2人はコンビニに入って行く。一番奥には、フレークでも脅せるような「底辺」の少年がいる。フレーク:「金 あるか?」。「僕のを買うんだ」。「俺のも買えよ。そしたら、仲間にしてやる」。こうして、フレークは無理矢理菓子を買わせ、店の前で3人で歩道に座って食べる(1枚目の写真)。新しく加わったハーミーは、「バズンスキーって奴知ってる?」と訊く。「いいや。ナンでだ? やっつけるのか?」。「違う。やられたんだ」。この時、エドウィンの父が車でやって来て、店の前で停める。車から降りた父は、ハーミーを指して、「これ、誰だ?」とエドウィンに訊く。「僕らの友だち」。「名前、あるのか?」。「ハーミー」。本人は、「ハーマン」と答える。店で買い物を済ませた父は、エドウィンに、「乗るんだ。家まで乗せてってやる」と声をかける。「まだ食べてる」。「乗れ」。エドウィンは、仕方なく立ち上がる。ハーミーは、「僕たちも乗れる?」と訊くが、父は、「仲間にさよならを言うんだな」とエドウィン言い、間接的に断る。父にとっては、2人とも息子の悪友でしかない。車の中での会話。「他に友達はいないのか?」(2枚目の写真)。「他に誰が僕とつき合ってくれる?」〔寂しい言葉だ〕。「さぁな、学校の誰かだ。大きな学校だろ」。そして、話題を変える。「どこに行くか、母さんには言ったのか?」。「メモを残した」。「お前には、口がついてるんだろ?」。「ごめん」。父は、さらに話題を変える。「お前にとって、今は辛い時だろう。だけど、そんな子はいっぱいいる。父さんだって、お前の年頃にはそうだった」。「そりゃ、そうだ」。「信じないのか?」。「『そうだ』って、言ったろ!」(3枚目の写真)。「ひどい目に遭った子は、お前一人じゃないんだぞ」。「そっちが始めたんじゃないか、こんな話!」。教頭に言われたからこんな話を始めたのかもしれないが、これでは逆効果。反撥を招いただけで、意思の疎通は悪くなった。
  

学校の食堂で、4人が一緒に食べている。女の子Aが、エドウィンに「あなたたち、ゲイでもいいのよ」と慰めるように言う。「高校に行ってる姉も、レズビアン同盟に入ってるから」(1枚目の写真)。この話にカチンときたフレークは、「いま、何てった?」と訊く。女の子BはAに、「言ったでしょ」とコメントする。すかさず、エドウィンは「何て言ったの?」と訊く。「こんなこと話すなって」。女の子A:「あのね、姉も辛かったの。誰かが話しかけてくれたら、って言ってたから」。これに対し、フレークは「俺たちがゲイだって言うのか?」と反撥する。「あのね、批判してるんじゃないわ」。「そうかい、もし、俺が、お前さんをクソ・アマ〔fuckin' skank〕って呼んでも、『批判してない』って言や済むんか? 腹が立っただろ? 俺だって、クソおかま〔fucking queer〕って言われりゃ、腹が立つさ」。エドウィンはフレークを制止する。そして、女の子Aには、「もし、誰かが、君にひどい悪口言ったら、僕らなら、相手の名前を教えるな」とコメントする(2枚目の写真)。その結果、出てきた名前にエドウィンは恥じ入ることに。それは、以前、居残りさせられた時、1つ前の席に座った9年生〔この州では中学3年に相当〕が、「くそったれ〔asshole〕」という字をいっぱい書いた紙を寄こした腹いせに、監督者に対し、「彼、パンツに手を突っ込んでマスかいてるんだ〔doing something with himself〕。気持ち悪いよ〔It's gross〕。机がぐらぐら動くんだ」と大きな声で嘘をついたことがあったからだ。その上級生が、仕返しに嘘をバラまいた次第。とばっちりを食らったのはフレークだ。
 

フレークは、自室に戻っても、怒りが爆発寸前。ゲイだという噂を流した9年生が許せない。「ボコボコにしてから、撃ち殺す」。それなのに、「ゲイの噂」の発端になったエドウィンが、「そんな手で、どうやってボコボコにするんだ?」〔フレークは、遊びで腕にペンキを塗り、皮膚を傷めている〕と批判(1枚目の写真)。「シャベルと くま手を使うさ」。「シャベルは無理だ」。「何が言いたい。チェーンソーだってあるだろ」。「分かったよ。じゃあ、奴を捜そう。奴のミルクに殺虫剤を入れたらどうだ?」。この最後の言葉でフレークはキレてしまい、エドウィンに殴りかかる。エドウィンは、「ナンのつもりだ?! やめろ、この野郎〔Get the fuck off me asshole〕!」と抵抗するが、顔を何度も殴られ、鼻血で顔が血まみれになる。騒ぎを聞きつけた母親が飛び込んで来て、フレークをとめる(2枚目の写真、矢印はエドウィン)。フレーク:「ウジ虫野郎〔Fucking maggot〕!」。エドウィン:「このくそったれ〔You piece of shit〕!」。「とっとと失せやがれ〔Get the fuck out〕!」。汚い言葉が飛び交う。エドウィンが家に帰ると、もう連絡は入っていて、父から、「ロディとサンダー・ドーム〔Thunder Dome、大ゲンカのこと〕やらかしたそうじゃないか」と言われる。「意味が分かんない」。母:「ロディのお母さんから電話があったの」。父:「大丈夫か?」。エドウィンは何も答えず、ただ泣くばかり〔唯一の友だちを失った〕。心配した母が抱きしめるが、かえって激しく泣き出す(3枚目の写真)。
  

その夜、エドウィンは一睡もできなかった。スクールバスに乗っても、死んだように元気がない(1枚目の写真)。45分のテストの時間中も、何一つ手をつけず、茫然として座ったまま(2枚目の写真、矢印は伸ばしたままの手)。帰宅しても、父と弟は楽しく遊んでいるが、エドウィンは身動き一つせずに芝生に座っているだけ。翌日。美術の時間。3人が1つの作業机に向かって1本の不思議な木の絵を描いている。この時ばかりはエドウィンも生き生きとしている。そして、また眠れない夜。エドウィンは画帳を手に、何も描かずにただじっとしている(3枚目の写真)。早朝、エドウィンは、スケートリンクの広い駐車場に行くと、仰向けになって空を見る。そして、ランチの時間。教頭がやって来て、社会化のためのプログラムへの参加を促すが、エドウィンの反応はゼロ。授業中に出ればいいので、授業を受けずに済むと「利点」を強調されても、反応はゼロ。教頭は説得を諦める。1人で帰って行くフレークを見る時の寂しそうなエドウィンの顔が印象的だ。腐った友でも、唯一の友達を失った悲しみは、とてつもなく大きなものだった。
  

エドウィンとハーミーが歩いている。ハーミー:「バズンスキーから助けてよ。計画を立てないと」。エドウィン:「計画? 茂みの後ろに隠れて、棒で殴りゃいい」。「それが計画?」。「相手は7年生だろ。キャンディを取り上げろ。砂場で押し倒せ」。「プラスチックのバットで追い回したら、取り上げられて叩かれた」(1枚目の写真、矢印は右目の黒アザ)。エドウィンは、「誰にでもあるって」と慰める。「違うな。僕だけさ」。「アホクサ。僕だって、いつもやられてるぞ」。ハーミーには、そんな言葉は耳に入らない。遂に、「父さんの銃を使うしかないかもな。僕をバカにするなって教えてやれる」と言い出す。まるでフレークと同じだ。エドウィンは、「バカ言うんじゃない」と諌めるが、「放っといてくれよ。誰かが何とかしなくちゃいけないんだ」と相手にされない。切羽詰ったエドウィンは、夜、フレークに電話をかける。1回目は、すぐに切られてしまったが、2回目は、相手が取った瞬間、「切るんじゃないぞ、能なし〔Don't hang up fuck head〕」と早口で言い、電話は切られずに済んだ。そして、本題に入る。「困ったことになった〔We got a problem〕」(2枚目の写真)。エドウィンは、ハーミーが銃を使って敵に仕返しをするつもりだと、状況を説明する。そして、フレークが質問を始めた時、エドウィンの母が用事で入ってきて、会話は中断された。
 

母が来た目的は、エドウィンの父の誕生日に、家族でどこかに出かけたいが、何かいい案がないかと訊くため。「あなたは、どこに行きたい?」。「湖。夏は、いつも行ったじゃない」(1枚目の写真)。母は、大賛成(2枚目の写真)。「ヨットに乗りましょ。長いこと使ってないもの。あなたや弟が あんなに好きだったのに。とってもいい案ね。分かったわ」。
 

翌日、エドウィンとフレークは、ハーミーに加害者を指差してもらう。2人は、加害者の家に行く。家の前では、加害者を入れて4人の子がバスケットボールで遊んでいる。2人は、それが終わるまで、近くの路上で待ち続ける。ようやく邪魔がいなくなる。エドウィンは、「それで、どうやる?」と訊くが、フレークは無視して家に向かう。その割に、フレークのやり方は実にお粗末。最初にかけた言葉は、「何か、作ってるのか?」。相手は安心し 「何の用だ?」と訊いてくる。「いいか、聞くんだ。お前、ハーマン知ってるだろ? お前くらいの大きさの奴だ」。「ああ」。「俺たちは、彼の面倒を見てやってる。あのチビは不器用だからな」。「その通りだ」。「あいつは、時々やられて痛がってる」。「そうだな」。「できたら、1・2週間、大目に見てやってくれないかな」。「何でだ?」。「お前、俺たちに やられたくないだろ?」。「やられるのはそっちだ、アホウ」。「7年生って、そんなにキチガイ揃いなんか?」。「庭から出てけ!」。そして、「母ちゃん!」と大声で呼ぶ。「庭から出てけ、クズ野郎」。「ていねいに頼んでるんだぞ」(1枚目の写真)。家から出てきた母親は、いきなり、「今すぐ庭から出ないと、警察を呼ぶよ」と命令する。フレーク:「呼べよ、クソどもを」(2枚目の写真)。「あたしに、何て口聞くのよ。あんた何て名前?」。形勢不利となり、フレークは逃げるように去って行く。やはり、フレークは、気弱で、口だけの低脳なクズだ。下級生にもバカにされる〔それにしても、エドウィンは最後まで何も言わなかった。なぜなのだろう? 寡黙なのだろうか?〕。2人は、そのまま歩いて行く。フレーク:「ハーミーを何とかしないと。ドアの問題を解決して、計画を進めるぞ。次の全校集会で決行だ。金曜日、体育館だ」(3枚目の写真、矢印は2人)。
  

フレークの部屋で。彼は、意気軒昂だ。「目に浮かぶぜ、事件後のニュースが。『2人の殺人者は中学生の非行少年。彼らにいったい何が?』。お前が、もし背いたら、撃ち殺すからな」。フレークは銃でしか力を示させない。実に卑劣で、偏狭で、弱い人間だ〔アメリカの銃社会にくすぶる闇の典型だ。弱者が銃を手にすることで、狂った悪魔になる〕。しばらく考えていたフレークが、「見つけたぞ。くさびだ」と言い出す。「何が?」。「何ボケてる。俺一人にやらせる気か? くさびだ。外からドアの下に打ち込んだら、中からは開けられん。何で思いつかなかったんだろう。お前もダメだな」。「じゃあ、金曜に決行ってこと?」(1枚目の写真)。フレークは、元々その気なので、敢えて返事などしない。エドウィンは、他にも心配になる。「撃った時の反動は大きいんかな?」。「お前が、ホモ野郎みたいに構えてなきゃ、平気さ」。「僕は、そんなじゃないぞ」。「なら大丈夫だ。もう帰った方がいい」。翌朝。キッチンで。エドウィンは母から、週末を湖で過すことが決まったと告げられる。「お父さんの金曜の講義が済んだら、迎えに行って、そのまま湖へ直行よ」。「講義の終わる時間は?」。「10時くらい」。ここで、エドウィンは、曜日に気付く。「金曜日?」。「そうよ」(2枚目の写真)〔銃撃の決行日と同じ日〕。「学校がある」。「早退すればいい。刑務所釈放カード〔モノポリーで使うカード〕で出るみたいにね。どうしたのよ。そんなに学校にいたいの?」。
 

翌日、食堂で2人が食べていると、ハーミーが前に座る。今度は、左目に黒いアザができている。フレークが「脅迫」に行ったせいで、バズンスキーに殴られたのだ。フレークが、「俺たち、バズンスキーに話しに行ったの知ってるか?」と訊く。「奴が、話したよ」。「奴にやられたのか?」。ハーミーは、恨めしげにフレークを見るだけで何も言わない。「あのクソ野郎。あのクズに言ってやる」。「もう何もしないでくれ」(1枚目の写真、矢印はアザ)〔フレークは、完全に見切りをつけられた〕。その日、学校が終わり、エドウィンが玄関の階段を降りると、後ろから美術の先生が追ってくる(2枚目の写真、矢印)。「待って、エドウィン」。そして、「おめでとう。良かったわね」。「ありがとう」。「地区大会で賞を取ったから、新聞に名前が載るわよ。すごいことよね?」。「ええ」。「こんなことになるなんて、思ってもなかったでしょ?」。「ええ」。「ご両親に報告するのよ。とっても名誉なことなの。自慢していいのよ。グループで頑張ったんだもの」(3枚目の写真)。エドウィンの表情はすごく複雑だ。もうすぐ自分はこの先生を撃ち殺すかもしれない。素直に喜べないのは当然だ。
  

ここで、独立した話が挿入される。エドウィンは、弟の青いナーフボールを持って、サッカーのグラウンドで寝転んでいる。このボールは、以前、弟が買って欲しいとダダをこねていた物で、今での弟の大のお気に入り。それを、ちょっと拝借してきたのだ(1枚目の写真、矢印)。グラウンドには、あと、幼児と父親がいて、父親が作った模型飛行機を子供が飛ばす。しかし、投げ方が悪かったのか、設計が悪かったのか、飛行機はすぐに落ちて翼が取れてしまう。つまらなくなった子供は、エドウィンが持っているボールに目を留めると、駆け寄って来て、「ねえ、ボール投げて」と声をかける。頼むにしては、随分変な言い方だ。エドウィンはボールを投げてやる。子供と父親はそのままボールで遊ぶ。しかし、彼らが引き揚げる時、子供はボールを持ったまま、グラウンドから出て行こうとする。エドウィンはすぐ立ち上がると、駆け寄って行き、「おい」と2度声をかけるが2人とも振り返りもしない。ところが、それを見てあきれたエドウィンが、小さな声で「何なんだよ〔What the fuck〕?」と口にする。“F word” ではあるが、非常に軽度の言い回しだ。ところが、ボールを盗んだくせに、この父親は「今、何て言った?」と過剰に反応する。「それ、僕のボールだ」。「違う、今、俺に何て言ったんだ?」(2枚目の写真、矢印は「クソガキ」が盗んだボール)。エドウィンも頭にくる。「こんなバカなこと、あるかって言ったんだ〔I said I don't fucking believe this〕」と、“F word” を強める。お陰で、父親に突き飛ばされる。何と暴力的な人間なのだろう? そして、平然として去って行く。エドウィンは、「僕のボールを盗んでく気かよ〔You're just gonna steal my fucking ball〕?」と怒鳴る。男が、再び向かって来ようとしたので、エドウィンは急いでバックする。そして、2人の背に向かって、「そいつは、僕のじゃない。弟のなんだ。聞いてるのか、このクソ野郎〔you fuck〕?!」と怒鳴る(3枚目の写真)。この事件が、冷静だったエドウィンに火を点けたことは間違いない。
  

家に戻ったエドウィンは、フレークと仲違いした時以上に落ち込んでいる(1枚目の写真)。母が古くなったズボンのことで話しかけても耳を貸さず、ただ泣いている。母が心配して理由を尋ねると、「舌を噛んだ」と嘘をつく〔泣くほど噛めば、普通に話せないが、母は気付かない〕。母は部屋から出て行く。弟が「僕のボールどこ?」と訊くのが聞こえる。「外に置いてきたんじゃない?」。「今、欲しいよ」。「外はもう暗いから、見つからないわ。もう寝なさい」。「いやだ」。母がエドウィンの部屋に戻ってくると、姿がない。エドウィンはベッドの下に潜って、むせぶように泣いていた(2枚目の写真)。朝になり、庭中捜したが、盗られたボールは見つかるはずもない。エドウィンは、「ボール、心当たりがある。きっと、フレークが借りたんだ。取ってくるよ」と弟に話しかける。弟はホッとする。ここで、順序は逆になるが、ボールの顛末を先に紹介しよう。エドウィンはボールを売っていた店に行き、買おうとするが、青一色のボールは売り切れてしまい、在庫もない。そこで、仕方なくピンクのボールを買う(3枚目の写真)〔ネットで見ると、「Sponge "NERF" Balls - Football」は 1400円くらい〕。弟は、最初は違和感を訴えていたが、すぐに満足してくれる。エドウィンの優しさが一番よく現れたシーンだ。
  

話は、少し戻り、エドウィンがボールを買いに行く前、学校の廊下で。エドウィンとフレークがヒソヒソと話をしている。フレーク:「全校集会は明日だぞ。晩飯が済んだら、お前に電話する」(1枚目の写真)。1人になった後、エドウィンはトイレに行って吐く。そして保健室に行き、ぐったりと寝ている。心配した美術のアーノルド先生が入って来て、「大丈夫?」と尋ねる。「気分が悪くて」(2枚目の写真)。「ええ、そう聞いてるわ。大丈夫なの?」。「授業はいいんですか?」。「作業を割り振ってきたから」。「欠席して、ごめんなさい」。エドウィンが初めて使った丁寧な言葉だ。ここで、先に紹介したボールを買う場面が入る。
 

夜になって、フレークから電話がかかってくる。エドウィンが平常心でないのは声からバレてしまう。フレーク:「おい、どうした? 息が荒いぞ。犬みたいだぞ」。「怖いんだ」。「今になって逃げるなよ〔Don't wuss out on me〕。聞いてるのか?」。「逃げるもんか」。「なんだよ、泣いてんのか?」。「違う!」。「そんなで やれるんか〔Are you gonna make it〕? そこまで行って、一緒に座ってて欲しいのか?」。「違う!」。「いいか、今夜はやることが山ほどある。みんなが眠ったら出て来い。1時か1時半か?」。「1時半」。「じゃあ、門のトコだ」。そして、深夜、エドウィンはフレークの家に向かう。家の脇の門では、フレークが待っている(1枚目の写真、矢印)。フレークはエドウィンを家の中に入れる。彼は予め銃器と弾薬を盗み出していた。エドウィンは、「なくなってるってバレないかな?」と心配する。「箱に鍵をかけ、ピストルは置いてきた」。カラシニコフを手にして構えたエドウィンは、「これって、すごく重いんだ」と驚く。「もっと前で支えろ」(2枚目の写真)。「交換したいか?」。「そうする」。そして、重要な会話。「何の関係もない人たちを撃つなんて怖くない?」。「俺の考えが知りたいか? どこかで、何か恐ろしいことが起きるようなもんさ。国旗や花束やロウソクや死んだ奴らの写真がいっぱい並ぶ。何ページもの言葉や詩もだ。それが何ヶ月も置かれてる… それくらいかな」。まるで他人事だ。エドウィンの質問に対する答えになっていない。それとも、この「無関心さ」こそ、すべての答えなのだろうか。話した後、何も言わないフレークを、エドウィンはじっと見つめる(3枚目の写真)。そして、2人は、それぞれの銃器の入ったバッグを抱え、学校に向かう。2人は教室の窓から中に入り、まず、フレークのロッカーに彼の銃器を隠す。そして、次にエドウィンのロッカーへ。当然、エドウィンには開けられない。「4, 17, 23」と番号を教え、開けてもらう。そして、フレークがエドウィンの銃器バッグを中に隠す(4枚目の写真、矢印はバッグ)。
   

家に戻って来たエドウィンは、喪失感を埋めるためか、弟の部屋に入って行く。弟は、ピンクのナーフボールを抱いて寝ていたが、目が覚め、「何してるの?」と訊く。「ママ、起きたの?」。「いいや、眠ってる。お前も眠るんだ、いいな? ナーフボール、気に入ったか?」。「うん。ピンクだけど。構わないよ」。その後も、2人の優しい会話は続く。エドウィンが部屋を出る前に最後にかけた言葉は、「お前はいい奴だ。知ってたか?」というもの。そして、朝。エドウィンは、母に起こされても、なかなか起きられない(1枚目の写真)。母は、「すごく疲れてるのね。今朝は用事があるの。だから、正午の15分前にしか迎えに行けない」と言って部屋から出て行く。キッチン・テーブルで朝食中には、「言われた所で待ってるのよ。学校中 捜し回らせないで」と念を押される。「パパは?」。「講義の準備があるから早く出たわ」。「『ガンバレ』と言っといて」。登校の準備が終わり、家を出る時、エドウィンは弟のいる2階を名残惜しそうに見上げる(2枚目の写真)。銃撃後は射殺か無期懲役だろうから、「永久の別れ」の気分に違いない。だから、不在の父に対しても、かけたことない励ましの言葉を口にしたのだ。最後に見に行ったのはキッチン。最後に、母の顔を見たかったのかもしれないが、姿が見えなかったのでそのまま家を出て行く。
 

学校に着いたエドウィンは、廊下でフレークに呼び止められる。「お前は、トイレに行って ベルが鳴るまでそこで待ってろ」「(ベルが鳴ったら)ロッカーに行って、バッグを持って(体育館の)ドアの前に来い。俺は、(出口全部に)くさびを打っておく。俺の姿を見るまで中に入るな。入るのは一緒だ。俺より先に入るな、絶対だぞ。いいな?」(1枚目の写真)。しかし、エドウィンはトイレで待つのはやめ、教室に入って待っていた。「授業が終わったら、全生徒は体育館に来るように」とのアナウンスが入り、終業のベルが鳴る。生徒たちは立ち上がるが、エドウィンは緊張してなかなか立てない(2枚目の写真)。ようやく立ち上がると、廊下を一斉に体育館に向かう生徒たちとは逆方向に進む。そして、トイレに行って顔を洗う。顔はひきつっている(3枚目の写真)。ようやく気が静まり、何とか廊下に出る。誰一人いない。ロッカーに行くが、当然、開けられない。その時、幸いに、美術の3人グループの1人、女の子Aが遅れてやってきて、「何してるの?」と声をかけてくれる。「遅れちゃうじゃないの。番号は?」。「4, 17, 23」。ロッカーは簡単に開く。女の子はそのまま開けようとするが、エドウィンは、「ありがとう」と言いながら、すぐに閉める(4枚目の写真、矢印はエドウィンの手)。
   

女の子がいなくなると、エドウィンは銃の入ったバッグを取り出し、体育館の回りの通路まで走る。バッグを開いてカービン銃を取り出し、マガジン(弾倉)を取り付け、チャージングハンドルを引く。そして、銃だけを持って2つの入口の一つに行く。フレークは、既に来て待っていた(1枚目の写真)。エドウィンがドアのガラスから覗くと、体育館の階段に生徒たちがぎっしりと座っている。フレークが小声で呼びかける。「おい、安全装置だ」。そう言って、銃を叩いて見せる。「安全装置を外せ」。エドウィンは外す。フレークがドアを開ける。エドウィンも急いでドアを開けて中に入る。2人は銃を下げたまま 真っ直ぐ歩いて行く(2枚目の写真)。フレークに気付いた角の女生徒が、「大変」と言って逃げ出す。彼女が悲鳴を上げたのと、フレークは撃ったのはほぼ同時(3枚目の写真)。その銃声で、生徒たちは騒然となる。エドウィンは思わず耳を押える(4枚目の写真)。とても撃てる心境ではない。
   

何もしないエドウィンに気付いたフレークは、「銃を撃て!!」と怒鳴る。「撃つんだ!! 撃て!!」。エドウィンは銃を構えるが、ひたすら怯え、立ちすくんでいる(1枚目の写真)。その間にもフレークの射撃は続く。エドウィンは銃を降ろす。映画で聞いている限りでは、フレークの撃ったのは10発。弾がなくなって装弾(?)している間に、警備員に射殺される(2枚目の写真、矢印は警備員の銃の閃光)。一方、銃を下げたままのエドウィンには男性教師が飛びかかり(3枚目の写真)、そのまま床にねじ伏せられる。横になったエドウィンの目には、床に倒れて動かないフレークの姿が見える。そこで、「ちきしょう! 放せ! フレーク!」 と叫ぶ(4枚目の写真)。茫然とした教頭の顔と、「フレーク!」と叫びながら泣くエドウィンの映像で、惨劇の場面は終わる。その後、どうなったのかは分からない。
   

映画は、がらんとして誰もいない学校を数カット映した後、急に湖に浮かぶヨットに変わる(1枚目の写真)。そして、エドウィンの独白。「夏になると週末にはいつも、僕らは、『マストついた犬の餌皿』みたいなヨットで湖に乗り出した。一度、サンフィッシュって小舟に乗ってる親子を曳航したことがある。2隻の舟が近づいた時、僕がロープを投げた。帰宅した時、すごかったって両親に言ったのを覚えてる。ママが褒めてくれたことも。波間から見えた男の子の嬉しそうな顔も 覚えてる。その時、僕は思ったんだ。『よかったね』って。その子のお父さんのように。『よかったね』って」(2枚目の写真)。ヨットに乗っているのは、両親とエドウィンの3人だけで弟はいない(1枚目の写真で、母のお腹が大きいようにも見える)。この映像は何なのだろう? 以前の会話の中で、「ヨットに乗りましょ。長いこと使ってないもの。あなたや弟が あんなに好きだったのに」という母の言葉があった。このシーンは、一家でヨットに乗っていた頃の幸せだったエドウィンの一番の思い出に違いない〔エドウィンも幼く見える〕。こんなに幸せだった家族から、乱射事件の犯人が生まれた。環境によって人はどのようにでも変わると、言いたいのだろうか?
 

    の先頭に戻る                 の先頭に戻る
   アメリカ の先頭に戻る            2010年代後半 の先頭に戻る

ページの先頭へ